よく質問を頂くというか聞かれることがあります。

「箕輪さん、年俸制にしたら残業代は払わなくていいんだよね?」

残念ながら、間違っています。年俸制というのは、単純に毎月払う給与を一年分いくらで決めて考えているだけで、それが残業代を払わない根拠にはなりません。

年俸制でも残業代は通常通り支払う必要があります

その時の注意点として、例えば年俸を14で割って、2ヶ月分を賞与(ボーナス)として支給する場合でも、支払うことが確定している賃金は賞与ではなく、給与の一部とみなされます。

つまり、年俸600万円(うち賞与100万円)としても、月500,000円での残業代計算になります(平成12.2.22東基発111号、平成12.3.8基収第78号など。厚生労働省労働基準局局長からの通達により記載されております)。

ボーナスだから、残業代の計算基礎に入れなくてもよいというのは間違いなのです。もしそれがいいのならば、月給与150,000円 ボーナス4,200,000円にすれば、残業代が相当安く抑えられてしまいます。

でも人を雇うとき一年分の経費は決めておきたいじゃない

これはもっともですよね。

要は、この従業員を雇って総額でいくら経費がかかるのか?ということをあらかじめ明確にしておきたいのが本音だと思います。だから、年俸制にして残業代とかで余計な?支出は考えたくないと。

であれば、年俸制にあらかじめの固定残業代を入れておくことは可能です。上記50万円に残業代分として、月30時間 100,000円分を含むなどです。勿論、30時間を超えた場合、差額分を支払う必要はあります。

行政的には、時間外労働等が年俸に組み込まれることが明らかであり、割増賃金相当部分が法定の割増賃金以上に支払われている場合、労基法37条(割増賃金支払)に違反しないとしています。

例外的に、年俸に全てが入っているとした判例があります。モルガン・スタンレー・ジャパン事件(東京地裁平成17年10月19日)ですが、基本給2,200万円です・・・。また売上げ歩合的なものが約5,000万円となります。

わかりますでしょうか?このレベルの給与支払でないと、普通の年俸600万円とかで契約していて、年俸制残業代未払いの裁判などになったら、ほぼ会社が負けるということです。

年俸制で安心と思っている場合、早急にその年俸の内訳を変更することをおすすめします。従業員が多数いて2年分遡って支払う場合など、恐ろしい金額になりますよ・・・。


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